
introductory chapter(以下ic)とclosing chapter(以下cc)の2本が存在します
しかし、同梱版もあり、1本のシナリオでもありますのでセットで扱います
一応、攻略可能なヒロインは5人となっていますが
icから登場するヒロインの2人「小木曽雪菜」と「冬馬かずさ」が
あくまで本作のメインヒロインといえる存在になっており贔屓されます
他の3人のヒロインは個別一本分のシナリオこそccで存在するモノの
箸休め的なサブヒロインと受け止められても仕方ない扱いになっています
本作のメインはあくまで上記2人に主人公「北原春希」を加えた3人の
不器用で奇妙な恋愛関係にあり、それが序章から通して長々と綴られます
一本のシナリオで語られるには長すぎる気もする男女3人が中心の人間関係で
起きすぎる偶然に力業的なモノを全体的に感じなくもありませんが
外的要因による問題の発生など飛び道具のない恋愛物語に始終しています
無くはないですが、ファンタジー設定の世界や、突飛な設定のヒロインで
話を牽引していく恋愛モノが多い中でこういう正当派は珍しいかなと
正直この3人は3人で現実に当てはまると宇宙人に見える方々ですけども
そんな人間関係でのみ進む、制限のあるシナリオでありながら
この作品はicから取りかかると結末に行くまでかなり長い話になっています
しかも、2人の間で長い年月揺れ動く為に用意されたとしか思えない春希は
その行動にある程度の理解は出来るモノの、共感や感情移入の難しい主人公です
また、メインとして最も活躍するヒロイン「小木曽雪菜」も、なかなかの曲者で
一般的に、良い娘であるとは思うモノの、良いヒロインであるかというと疑問なとpころ
これらの要素を考えれば、物語を進めるのは非常に辛いモノではあり
感情こそ揺さぶられるシーンはあるモノの、大筋に共感する事は出来ませんでした
しかし、全ての結末を見るまでプレイを止める事はありませんでした
勿論、良くも悪くも休まる暇のない展開の連続があるというのもポイントですが
演出やシナリオといった要素がしっかりと作られていたからだと思います
メインキャラ達に嵌る事は出来なかったモノの良くできた作品であるというのが
この作品をプレイし終えた後に浮かんだ感想です
ただ、演出がしっかりしていると書いた中で音での演出が数多く見受けられ
そこでは、プレイヤーの操作を受け付けず流れる事が何度かあるのですけど
演出の意図は分かるものの、個人的にはテンポを崩している面もあるかと思いました
特に歌の辺りは個人の好みがかなり出る色々デリケートな部分ですので……
あとシナリオの仕掛けを仕込み過ぎているというか狙い過ぎているきらいもあるかなと
終盤に結構そういう場面が見られるのですけど、正直過剰に思う部分もありました
全体的に過剰なのは恋愛ドラマ的な部分を狙っているというのもあるのでしょうけど
尤も、シナリオの緩急に役立っている面もありますし、良し悪しではあるのですが
今となって語るのもいかがなモノかと思いますが本筋を見ればしっかりと作られた
エロゲー的なお遊びの少ない恋愛ストーリーになっているかと思います
あくまで恋愛が中心であり、舞台をひっくり返すような仕掛けを期待する話ではないです
恋愛となると胸焼けにが起きるような方には非常に厳しい話だと思いますし
先に語ったとおり主人公やメインヒロインはかなりの曲者ですし、好みがでるでしょう
そんな感じで人の好みを分けそうな作品ではあると思うのですけども
興味があって少々の苦手意識で避けている人がいれば触ってみても良いかなと
また、それこそ雰囲気が気に入った方なら、問題なく楽しめる作品かと思います
……いえ、やっぱり個人の好みによる差が大きくでると思います
全体的に良く作られた作品だとは思うのですが
以下、ネタバレを含む感想です
【システム】
・画面は16:9のワイド
・キャラ別音声切り替え有り
・主人公音声有り
・シナリオロック有り
テキストを進行させる上の便利機能的なモノはないです
スキップがそれなりに早いのでジャンプが無くても問題ないですが
シナリオロックなどで周回が多いのでやはり多少面倒かなと
icとcc両方インストールしているとccからicが呼び出せるようです
ccの一番最初の回想シーンはicの内容になっています
つまりicをプレイしないとccの回想は全て埋まりません
【シナリオ】
□introductory chapter
タイトル通りの「序章」で選択肢無し、一本道、Hシーン1回
2周目をプレイすると一部の話の裏などが補強される演出があります
そこまで追加要素が多いわけではなく、シナリオも変わりませんが
ccに繋ぐ為には2周のプレイをしておいた方が良いでしょう(出来ればノベルも)
お話はそのまま3人の馴れ初めを語る序章です
学園祭に向けての特訓、学園祭、3人での温泉旅行と尺に対してイベントが多く
春希の思考もそこまでネガティブはない為、テンポ良く話が進みます
終盤の互いの行動が、今後続く3人の関係に大きな傷を残す事になるのですが……
当時は、単品で発売されたモノの単体では全く完結していないのですが
今後の関係は想像に任せるという締め方を考えるとこれで1つの話と
解釈できなくもないです、いえ、勿論やった以上ccにも手を出すべきですが
□closing chapter
icから3年、大学の3年生となった春希達の物語
3年前のあの時から雪菜との恋人関係は解消せず、別れることも出来ないまま
しかし、恋人らしい事どころか会うのも避ける関係になっていました
そんな雪菜とのもどかしい関係の傍らで大学生活を通して
大学で同じゼミに通う悪友のような存在の「千晶」
バイト先の塾の教え子の親友である付属生の真面目少女「小春」
バイト先の出版社の上司であるキャリアウーマンの「麻里」
と言った女性に出会っていきます
果たして春希は現在の雪菜との関係を正常な状態に修復できるのか
それとも?
■和泉千晶
cc開始時から登場しており、春希との関係は比較的長い悪友のような間柄
演出面でもcc開始から仕掛けがあり、シナリオロックなど優遇されている部分が多く
追加ヒロイン中ではメインといっても差し支えないかなという存在です
ccにおける(色々な意味で)大ボスである所の雪菜と正面から戦えるのは千晶だけです
結果的に春希をプレイヤーを翻弄した演劇の怪物もほつれが生まれてしまうわけです
その力関係から千晶は、雪菜にはなれず小春希ならぬ小雪菜となってしうまわけです
実際は、それ位の弱点を見せてくれた方が人間らしくもあって可愛気もあるわけですし
この破綻があるからこそ、千晶の問題行動がそれ程気にならないのかなと個人的感想
演劇については歌と同じ感じで、この辺りは好みが出ますね、とだけ
■杉浦小春
その名前から本編でも呼ばれていますけど、そのまま「小春希」なキャラです
サブの3ヒロインは明らかにメインの3人と対応的な部分を担っていて
小春の存在を持って明確に、そうであることを宣言しているように思えます
しかし、CG的には髪型などの関係から「小かずさ」に見えるんですよね
どちらかというとかずさが「大小春希」みたいな感じで、良く分からなくなってきた
春希と雪菜の関係がどうかより、春希と小春の関係自体が問題となる話です
ちょっとした誤解とレッテルだけでここまで追いつめられる小春に対して
何だかんだで周囲に許されている春希はどれほどイージーモードなのかと言う事で
友人の恵まれ具合こそが「小」であるか否かの違いなのかも知れません
話は春希のグダグダ成分もなく嫌いではないのですが、最後は誤魔化されたような
雪菜EDのかずさと関係修復シーンのライトバージョンみたいに
小春らの関係の修復もしっかりと書いて欲しかったですね
■風岡麻里
仕事の鬼ともいえる春希のバイト先の出版社の上司
端から見ると何時休んでいるんだろうと不安になる人なのですけど
丸戸作品に出てくるプロフェッショナルっていつもこんな感じですね
年齢的に見て新人から漸く抜け出せるぐらいの筈なのに……
そんな会社でのエリートぶりとは裏腹に私生活の情けなさはお約束で
不器用な愛情表現や空回り気味の行動は、やり過ぎと思える位可愛いヒロインです
春希に惚れた理由が一番不明なヒロインですが、そのちょろさ含めて麻里さん
普段は頼れる人ですが、恋愛は普段受け身の春希が積極的に攻める程ヘタレです
シナリオの最後における春希の勘と根回しの良さは非常に春希らしくなくて
いつもの丸戸さんのシナリオを読んでいるような気分になりました
小春と並んで別の作品、非常にエロゲーらしいお話をやっている感覚になります
しかし、codaで他の2人はともかく、麻里は名前以外影も形もないのは不自然な気も
出てきたところでやたら傷つくか、下手な逃げ道を示すだけ泣きもしますけど
麻里にとって2年という歳月はかなり重いモノなのかも知れないですね(年齢的な意味で)
□coda
ccの雪菜ルート後に登場する最終シナリオになります
ccから更に2年経ち、社会人1年目となった春希達の物語です
ccで登場した3人のヒロインは麻里ですら姿形もなくなり
雪菜と春希の関係は順風満帆の様に思われ、プロポーズを控えていました
そんな時、海外出張の先でのまさかのかずさとの再会を果たします
雪菜、春希の現在の関係を鑑みれば今となっては事後処理のようなもの
と済ませることが、2人には勿論出来るはずもなく……
5年前、かずさが海外に飛び立ったことによってお預けとなっていた
春希とかずさ、雪菜とかずさの関係を清算するときが来ました
■小木曽雪菜
3シナリオ全てで出演しており、最も出番が多く、最もシナリオに関わるヒロイン
icの事件がトラウマなのか、いち早く春希の変化に気付きついて、罪悪感を抱かせつつも
逆に、裏切りに対して素早く気付いていることを知らせる事で、締め付けを弱くしている
雪菜がいるからこそ、このゲームは非常に息苦しいモノに変わるわけですが
春希やプレイヤーの心が底まで落ちないのも雪菜というセーフティがいるからでしょう
ccで追加されたヒロイン3人の話に対しても形は色々あるものの深く関わっていき
出ずっぱりで、しかも春希の行動に幾度と無く傷つけられる事になる雪菜は
しかし、キャラが崩壊する事もなく表面上はマイペースに雪菜という存在で有り続けます
シナリオ全体で様々な役目を任され器用に立ち回った結果、歪な超人になってしまった雪菜
同時にシナリオでのある種での過ぎた優遇故に個人的にに受け入れがたい存在になりました
雪菜が初めて自分を崩すのは良く悪くもcodaで再登場するかずさの存在によってです
それが春希とかずさと雪菜という3人の5年経っても続く微妙な関係を現しているようです
しかし、朋という存在を見る限り女性の友人というモノのに雪菜は弱いのかも知れません
codaの結末を見ると春希にとってのヒロインはかずさだった様ですが
「WHITE ALBUM2」にとってのヒロインは最初から最後まで雪菜なのだなと思いました
そう言う意味でも雪菜が好きになれるか、なれないかは春希の存在以上に
作品の評価の好悪に繋がる存在なのではないかなと思ったりもします
■冬馬かずさ
ccでは直接で会う事はなくcodaで再会する事になるもう1人のヒロイン
ccの終盤に登場する絶対選択できない選択肢はこの作品随一の演出でしょう
5年もの歳月を顔合わせせず、婚約まで取り付けようとした春希と雪菜2人の関係に
あっさりと割って入れるだけの影響を及ぼしてしまう、春希にとっても雪菜にとっても
決して避けて通る事の出来ない非常に大きい存在です
closing chapterの焦らしプレイを超えて満を持してcodaで登場なのですが
それぐらい特別な娘なのに立ち絵の不安定感がヒロイン中随一だったりします
閑話休題、格好いい振る舞いや態度とは裏腹に、子供っぽい性格は成長せず相変わらず
恋愛関係に置いても非常に稚拙で子供のように甘えてくる姿は破壊力が高いです
雪菜と駆け引きをしていた千晶をあざ笑うかの如くパワープレイでヒロインの座を奪います
実際、じゃれついているシーンは麻里に並ぶあざとさを持つヒロインですし
こんな状況じゃなければ非常に美味しい立ち位置のヒロインとなり得たのでしょうね
シナリオの構成上、恋愛という面では非常に損をする位置にいるかずさ
こんなタイミングの登場ですが、そうでなければ春希はかずさを選びそうですし
codaで書きたいシーンを実現するには、ギリギリのタイミングがここなのでしょう
シナリオの調整役である雪菜とは別の、演出という面で負担を強いられている印象があり
逆に、この貧乏くじの引き具合がこの作品のヒロインたる条件なのかも知れません
■余談
この作品の一番書きたい部分がcodaであるのは解るのですけど
ccでの雪菜の結末の後codaが始まった瞬間は多少ため息が漏れました
それ故にタダの三角関係ゲーで終わらなかったとは思うのですけど……
【Hシーン】
小木曽雪菜:6
冬馬かずさ:8
和泉千晶:3
杉浦小春:3
風岡麻里:4
雪菜とかずさが多いです、尺は標準程度ですが意外とシチュエーションは豊富です
流石に足で……みたいなファンタジーはないのですけど胸で……はあります
基本的にはシナリオ終盤で固めてと言う形式が多い為罪悪感やまもりなプレイが多く
それを燃料に楽しめる人はともかく、気にする人には使いにくいものになっているかと
雪菜のみヒロインとしてのポジション故、上記の罪悪感属性はひかえめかなと思います
また、恋人関係ではあるので、終盤以外にHシーンがちりばめられている印象です
しかし、何でしょうかねこの作品のHシーンは「某NGな恋」の時みたいに
見ているとやたらAVを見ているような印象を受ける事が多いんですよねこの作品
あの時は絵がそもそもエロゲーというよりAV的な構図だったのもあるのですけど
【まとめ】
正直気になる部分が大量にあり、非の打ち所無い作品とはとても言えませんが
良く作られており、最後までしっかりと読む事が出来る魅力があったのは確かです
先に語ったとおり、ジャンル的に結構癖があるので人を選ぶとは思うのですけど
多少の苦手意識ぐらいは無視してプレイしても損はないかなと思う作品です
ただ、萌え(ある意味こちらはありですけど)とか燃えを求める作品でもないので
そう言った一極集中型の娯楽作品を求める場合はこの作品は合わないと思います
見た目通りこうなのでしっかり雰囲気を確かめておくべきだと思います
そう言えば最初プレイする前は陰鬱なイメージだったのですがそこまでではないですね
全体的に重い事は確かですが、そこかしこでさりげない(?)フォローが入り
どこまで胃を痛めるような作品となるのを避けているように思えました
甘いという意見もあるかも知れませんが、より万人に受け入れやすく
プレイしていても過剰に嫌な思いをせずにすむ為の配慮かなと思い
このフォロー事態は多少あざといと思う部分はあったのですが悪くないと思いました
そんなわけで、2011年の最後に出た話題作であるWHITE ALBUM2なのですが
所々過剰な装飾を感じる部分はあるモノの良く作られた作品であると思います
癖があり人を選びますが、雰囲気的に大丈夫そうなら充分オススメ出来る作品でしょう
しかし、好きな作品かと2011年の私にとってのベストか言われると……うーん?
ただ、長いので時間は掛かりそうですが、もう一度最初から読み直してみたいですね
そうすればまた違う感想となるかも知れません


