
ひょんなことから、アイドル養成施設「鳳央学園」で4人のワケありアイドルを
育成する事になった新米プロデューサーの「火浦錬」と4人のアイドル候補の物語
単純な選択肢でシナリオが分岐するADV
ヒロインはD-EVEのメンバー4人、サブなどのサービスはありません
4ルートとも分岐後は一直線でHシーン以外特に選択肢はありません
プレイする上で特に悩むことなくプレイできる作品かと思います
華々しいアイドルのイメージと違い、お話は手堅く、主人公錬を中心とした
プロデュースする大人達の話が結構なウェイトを占めていたりします
ステージで活躍するアイドルとの秘めたドキドキの恋愛というのは薄く
キラキラしたイメージでこの作品に手を出すと少々物足りないかも知れません
ただ派手さはないモノの、メイン、サブともキャラがしっかりと書かれており
人間関係や鳳央学園を中心としたアイドルの世界も堅実に描かれています
お話の展開もありがりながら丁寧に描かれており、しっかりと楽しむ事が出来ました
王道のスポーツもののようなノリでアイドルの成長物語が楽しめます
そんな王道の話を盛り上げているのは魅力的なキャラクターかと
個性的でバランスの取れた4人のヒロインはもとより、ライバルとなるサブヒロイン
そして彼女らを支えるプロデューサを中心とした大人な達が活躍します
ありがちな展開であるからこそ、彼ら、彼女ら脇役の魅力が光ります
正直このサブキャラの存在がなかったら、結構退屈だったのではと思う事も
それだけ彼らの存在と功績は大きいという事で……でもアイドルモノとしてどうだろう
アイドルモノと言うより、アイドル業界モノという感じのお話です
主人公がアイドルでも何でもないので当たり前と言えば当たり前ですが
ただ、この辺りはある程度解っておかないと、物足りない作品かなと
一部のヒロインはしっかりアイドルしていますが、それでもイベントは弱いです
周辺をしっかりと描いた分、「美しくて可憐で神々しい」アイドルを描く余地が無く
プレイヤーとしてはアイドルを目指す才能ある等身大の女の子が相手になります
裏から言えば当たり前なのですけど、あらすじで節に訴える
「~トイレにも行かなかった」アイドルというものも見てみたかったです
以下、ネタバレを含む感想
【ヒロインとか】
■共通シナリオ
プロローグから始まり5章までが共通ルートとなります
祥子→由芽→美波→詩音の順番でエピソードがあり
5章の学園のイベント、鳳央祭に関するお話となり、終盤で分岐
華々しい功績を上げた後のD-EVEの活動の話という形で個別となります
サブなどの脇道はなく、分岐したらあとはメインのアイドル一直線
4人という事で、手抜きとは思わないモノの多少ボリュームが不足かな
■紅川詩音
メインヒロインだと思う……メインのシナリオ以外目立たない娘です
去年は主席だった事もあり、学園関係者からは注目される立場にある
元は大手プロダクションのタケプロで花井瑞姫とコンビを組んでいたが
ヒラプロに移籍してD-EVEのメンバーとして活躍する事になるのですが……
スランプ中で特にへまはしないようですが、個別以外は基本的に空気な娘です
その分ヒロインとして覚醒した時の扱いはまさにアイドルの申し子というところ
覚醒後はアイドルという職業に真っ正面から向かっていくのは祥子と同様ですが
こちらの方が、功績が輝かしく、華々しい気がします……これは、血の差なのか
多少、家族間の問題はあるモノの、王道のアイドルモノの1つという印象ですね
ただ、安定期に入った詩音はアイドルとしてはほぼ無敵なので、山が弱いかも知れません
大抵トラブルに見舞われるD-EVEが、華々しくステージで活躍するのは気持ちよく
他のシナリオで溜まった物足りなさを解放するのによいシナリオではないかなと
祥子と同じく最初か最後にやるのがお薦めのヒロインかと思います
しかし、花井さんはマジ無冠の帝王ですね、水上カラオケ100点が一番輝いていた
■遊佐祥子
スタイルはよいモノの音痴だったりカナヅチだったり、自分を偽るのが下手だったりと
アイドル方面の能力では微妙に不器用だが情熱は人一倍強く
基本的にアイドルへの執着が弱い集団のD-EVEにあって唯一、意識が高い
多少、難儀な性格で、ある意味由芽と非常に相性が悪そうな娘であるが
その辺りは美波が上手い緩衝材となっているのか、愛嬌と思っているのか……
基本何らかの才能なりを持ちあわせている中で光る部分は余り無く
ただ、逆にその分、アイドルの仕事をこなしていく姿が様になります
基本目立ちたがり屋の性格も鳳央祭の成功からは歯車が上手く噛み合うのか
他のヒロインが沈みがちな個別シナリオで唯一、安定した状態になります
本人の問題は個別になって殆ど解決してしまっているので
お話は身体の弱い身内が焦点となります、こういうのも何ですけど
自分自身の問題で負のループに陥るよりも、誰かの為に努力するという展開の方が
見ていて気持ち良いものがあります、如何にもアイドル的ですしね
他が少しアイドルと離れた部分で多く語られた分、こういう王道のストーリーは
心地よく感じられました、最初か最後にやると気持ちよくプレイできるかもしれません
■武岡美波
錬に対してはふざけているのか本気なのか解らないアプローチを掛けてくる少女
少々、危ない言動も目立つがマイペースで、落ち着いており、周りへのフォローも可
その適正からか、個性派集団であるD-EVEのリーダーに抜擢されることになる
基本、器用ながら、アイドルとして抜きんでた部分はなく、そこに負い目を感じている
ライバル担当となるアイドルも特におらず、アイドル成分は一番少ないお話
そもそも個別シナリオの半分以上はアイドル活動を休止していますしね
その分、姉川を中心とした大人達の話が多めに取られております
このシナリオこそ顕著ですが、錬と言うマネージャー視点が中心のお話なので
アイドルと言うよりも、アイドルの成長を見守っていく大人達の話が多いのですよね
全体的にふさぎ込むような展開が多く、アイドルの華々しさからは少し遠い話です
しかし、ある意味この作品の見せ場である裏舞台は一番描かれているかなと
多少の焦りや、無力感はあるモノの、努力して現状を打破しようとする錬の行動力故
あまりストレスの貯まらない展開ではありましたがの、華が何とも足りない話でした
共通ルートが良いキャラをしているだけに、もっと余裕のある美波が見たかったです
■生方由芽
一番アイドルへの執着は弱いが、才能についてはトップクラス
ダンス、歌、トークとそつなくこなしてしまうD-EVEのエース
しかし本人はアイドルではなく、実際はお姫様になりたいという
その辺りズレが共通では上手く作用するモノの、錬との距離が縮まる
個別ルートでは問題として露呈していく事になってしまう
お話の中心はアイドルの自覚、そしてアイドルとの恋愛ということで
アイドルとの秘めた恋愛というのはどのルートでもそうなのですけども
周囲の反応が一番過剰であり、深刻視されるのはこのシナリオになるでしょう
全てがコレでなく由芽にだけ絞られたのは幸いと思うべきでしょうか
全体を見れば各ヒロインで上手く役割や展開を分けているのですよね
ギスギスした展開となると思いきや、サヤの存在がへこむ暇は殆ど与えられず
仕事をしている身として、へこんでいる暇があったらと言う感じでしょうか
このシナリオだけでなく、山場となるテンションを落とす部分も
サブキャラを上手く動かす事で印象を柔らげているなという感じです
こういう、シナリオでこそ解る良キャラクター達のありがたさよ
エピローグのあの絵を見て、今まで幼いという言葉すら似合いそうだった由芽が
いちばん大人びたという成長は面白いと思いました、これも王道ですが
【Hシーン】
どのヒロインも共通して4シーン、場所と服を変えてのノーマルタイプ
前義→本番の流れが殆どで、特に変態的なプレイなど話です
裸の塗りが妙につやが強く、気になる人はなるかもしれません
私事ですが「もっと、姉しよAS」で慣れたのであまり気になりませんでしたが
サブや複数プレーなどはなしです
【まとめ】
アイドル業界で、プロデュースするアイドルと共に成長していくお話……かな
舞台も割としっかり描かれており、サブキャラはアイドルはもちろんの事
大人連中含めて魅力的なメンバーが揃っており、丁寧に作られた印象を受けます
ただ、アイドルモノとしてアイドル成分がやや不足しているかなと思います
4人中2人がアイドルとしての意欲が非常に弱く、個人の問題に留まる事が多いです
ライバルとなるサブキャラクターの面々も魅力的な存在であるのに共通を抜けると
基本的に、対となるヒロインのルートのみ活躍して他では空気となります
その代わりに目立つのが彼女らを支えるマネージャーの面々、多少偏りはあるモノの
安定した活躍を見せて、お話を盛り上げてくれます……担当のアイドルよりも
当たり前と言えば当たり前ですがこの作品はマネージャーの「錬」視点であって
アイドル視点ではないのですよね、そう考えれば華々しいアイドルの活動自体よりも
裏で彼女らを支える人間達との関係の方がずっと濃く描かれるのも仕方ない事でしょうか
幸い、アイドルを支える大人達も、攻略対象という意味ではなく、良いキャラをしているので
その部分で楽しむ事は出来ました、涙目で不機嫌になるチンピラさんマジ可愛いです
ただ、これはこれで良かったけど……やっぱり、アイドル活動的な部分は
もう少し魅せてくれるゲームであって欲しかったなと言うのが正直なところです
レッスンとリハーサル、収録前、収録後、楽屋裏といった部分ばかりですし
ライブにしても間のトークだけとか、基本アイドルが見られない仕様になっています
アイドルとして活躍している女の子達の、女性としての素顔というのがメインです
個別ルートを見ると、殆どが個人や人間関係の問題に陥りますし、態とでしょうか
その中で唯一自分の欠点に早めに決別した祥子がアイドルらしいシナリオだったかなと
一番アイドルとしての資質でだめ出しをされている子なのですが、皮肉なモノです
何度か言うように、基本、アイドル活動する上で芸能界の洗礼を受けて……
という流れになるので、下げ気味の展開が多いのですけど、多少空回りはあるモノの
錬がしっかりとフォローをして、ストレスが貯まる展開になることは避けられました
チンピラ含めて不快なキャラクターがいないのは良い事ですね
アイドルの世界輝く少女ではなくアイドルの業界を支える大人達のお話
歌って踊るアイドルを期待すると肩すかしかも知れません
コレはコレでありですが、魅力的なサブキャラ、しっかり描かれたアイドルの世界と
もっと面白くできる素材が豊富に存在しているだけにもったいないと感じる作品でした
最近FDが欲しいというゲームが多いですね、これもそうです


