
四季シリーズも一区切りを終えて、シリーズを引っ張ったライターが抜け
転機となるのは間違いない作品ですが、果たしてどうなったのでしょうか
【あらすじ】
「御影海人」は些細なことで怒りを覚える性格に振り回されつつも
過去の事件から出来る限り人との関わりを避けて日々を送っていた
しかし、子供に虐められていた亀を助けて、亀の飼い主の「乙音ニコル」と
接触したことから、事態は思わぬ方向に動き出していくことになる
海人は学生会の会長を務める「夏目暦」から「星渡り同好会」に勧誘される
同好会は「魔可」と呼ばれる特性に振り回されるものたちの集まりであり
メンバーがもつ「魔可」をなくすために協力するように持ちかけられる
最初は渋ったものの、自身の持つ魔可「憤怒」の厄介さを目の当たりにし
器物はソンで半ば脅されつつも、星渡り同好会に所属することになる海人
7人目として現れた「嫉妬」の魔可を持つ、古風な喋り方の編入生「天ヶ瀬奈月」
大量の食事を摂取してしまう「暴食」の魔可持ちである不良少女「朝比奈晴」
不意に眠ってしまう「怠惰」の魔可を持つ学生会会長「夏目暦」
女性に好かれる「淫欲」の魔可を持つ人懐っこい後輩「乙音ニコル」
物欲に支配されてしまう「強欲」の魔可を持つ面倒くさがりな「高坂夕姫羽」
個性的な面々に囲まれて、同好会として表向きの目的である、「七夕祭」の準備に
明け暮れながらも過ごす日々にだんだんと充実を覚えていくことになる海人
果たして、仲間たちと共に同好会の発表を成功させることが出来るのか……
ではなく、「カルマルカ」に接続する儀式に成功し「魔可」を払うことが出来るのか
【システム】
・画面は16:9
・キャラ別音声設定あり
・前の選択肢へ戻るあり
・Continueあり
・攻略制限有り(グランドルート)
基本的なのは揃っているかと思います、プレイで困る事はないでしょう
分岐は基本がマップ選択式かつ、個別ルートでは選択肢がないので
「前の選択肢へ戻る」がほぼ無意味のない機能なぐらいでしょうか
コンティニューは中断時点から再開できる便利機能
最近は萌えゲーならとりあえず標準装備という感じですね
ヒロインは4人+αのサブヒロイン1人、おまけルート1つ
お決まりともいえるグランドルートが1つという感じです
個別のボリュームはそこまで多くなくあっさり風味かと
グランドもヒロインルートより多少長い程度になっています
ヒロインの分岐はマップからヒロインを選んでストーカーをすれば良く
グランドは、解禁されるとプロローグから見るようにとガイドしてくれます
一応CG回収の話をすると全員満遍なく話すと1枚その他枠に入ります
【雑感】
魔可ということで、ある種お決まりともいえる「七つの大罪」をネタとしたお話……
なのですが、魔可の設定は持て余しているというのが正直なところでしょうか
実際のところ魔可の性質自体、それ程重要なポジションでないのかもしれませんが
個人的に、関心を迎えたのが魔可の方で、カルマルカの接続の儀式より関心がありました
メタ的にみても、シナリオを回す上で便利な要素だと思うのですが、何故かスルー状態です
この為、出会いだけ強烈な印象だけど、あとは普通なラブコメみたいな内容になっていました
普通のラブコメとしてみると上等かというとそういう感じでもなくあっさり気味でして
共通がそこまで長くないのもあるのですが、かなりハイペースで仲が深まっている感じです
萌えについても、シリアスとイチャラブを交互に行っていくパターンでじっくり楽しめず
全体の分量としても多いとは言えず、中途半端というのが個人的に感じたところでした
シナリオについては完全にヒロインとのイチャイチャが絡まないグランドに偏っており
個別シナリオとの連携を諦めているような、部分も感じられたのですが果たして……
爆発力に欠けるとは思うのですが、伏線などはしっかり回収していますので
不思議な伝承が絡むラブストーリーぐらいの気持ちでプレイするのが良いかと
やはり良くも悪くも今までの癖の強さはないので、そこが好きな人は微妙かもしれません
以下、ネタバレを含む感想
【ヒロイン】
■天ヶ瀬奈月
「嫉妬」の魔可を持つ少女、魔可の影響か何故か海人に好意を持ってしまう
橋で出会った、少々古風で男前なしゃべり方をするクールな美少女……
と見せかけて、可愛いマスコットが好きとお約束ともいえる一面もある
また、星空については関心が強く語りだすと非常に饒舌になる部分もある
本作のメイン枠ということで、何かとつるむことになるヒロインとなっています
あえて言うまでもなく過去に顔を合わせており、そこが重要な部分につながります
天文の話と嫉妬の魔可と本当の気持ちとの間で揺れる奈月との関係が描かれます
グランドシナリオで重要なキーワードは幾つか出てきますが、言葉だけという感じで
シナリオ自体は魔可やカルマルカは一旦置いて普通のラブストーリーという感じです
最後の山場も良くある感じの展開ですが、急に連絡が来るパターンを使いすぎのような
■朝比奈晴
「暴食」の魔可を持つ、学園を休みがちな学園一の不良少女
魔可の影響でエンゲル係数は高いが、独立志向が強いのかバイトなどで賄っている
とある理由から男性不信であり、海人にもきつい言動を発する部分もある
学園では女子の中では何かと浮いている感じではあるが……
シナリオ中、一番魔可やカルマルカに振り回されているシナリオという感じで
多分こういったシナリオを少なくとも私は本作に求めていた気がします
男性不信の部分や独立志向もシナリオに上手く組み込まれていたかなという印象
ただ、権力者とか大人への不信っていうのは解りますが男性嫌いってのは飛躍が……
その分、ツンとデレが生まれて他のヒロインと比べて関係にメリハリがあるのですが
何だかんだと短いなりに丁寧に話を書いていた印象があるだけに最後の唐突さだけは
少し残念に感じてしまうシナリオになりましたね、もう少し尺が欲しいところでした
グランドにつながるキーワードとしては7年前の事件が仄めかされることでしょうか
カルマルカの接続の儀式についても、正解に近づいておりシナリオの重要度は高いです
全体的に優遇気味で個別での印象はメインの奈月よりも強いのが正直なところですね
■夏目暦
「怠惰」の魔可を持つ学生会の会長、星渡り同好会のメンバーも勤める多忙な人物
優秀な人物であるが、あるが故に自身の魔可を看過できず、メンバーを集めている
普段が真面目で隙のない人間だけに、怠惰によるいねむりによるオチ担当や
バイトでの可愛い制服、ラーメン好きや、数学の知識が豊富故のずれた感性など
端々で、隙やボケを見せるギャップ的な可愛さが推されている萌え担当です
ただ、どの段階で暦が海人に惚れたかわからないという問題点も……
途中までは、サブヒロインの夕姫羽とルート展開が同じになっており
そこから、それぞれのヒロインのシナリオに分岐する流れは上手く書かれているなと
どちらかというと各ヒロインの性格によるところで魔可とかは関係ないのがあれですが
暦は才媛キャラで陥ってしまいがちなwikipediaシナリオ……というのは置いて
優秀な人間であるが故に、他人の合理性の無い行動が理解出来ないということで
養護施設の子供や海人との関係により、徐々に理解を示していくことになる暦
しかし、夕姫羽の気まぐれで挑んだ数学の懸賞問題で暦の優秀さが知れ渡り
海外の研究所からお誘いが掛かることになる、非常に栄誉な話であり
合理性を考えればそれは、選ぶべくもない話のはずだったが……という感じで
要は人の気持ちというのは難解な数学の方程式より難しいんだよって話ですね
こういうシーンは見る毎に書いてますが全学生を前にしてのスピーチはのシーンは
歌とか演劇とか演説とかを行って、周囲の賛同を得るという描写をするからには
やはり、それなりの説得力のあるシーンであって欲しいですね……という
色々と専門的な用語が出てきますが、単語で調べればあらましは出てくるので
興味があれば呼んで見ると面白いかもしれない、wikipedia必携シナリオです
基本的には会長のかわいさを楽しめばよいのだと思います、魔可?はて?
あえて、グランドに向けての要素を考えると学園長の存在を知らせることでしょうか
一応、教育者としてただの悪役ではないこともココでフォローされてはいます
■乙音ニコル
カメ(?)「ノコ」を連れた少女、ノコを助けた縁で海人と接触が行われて
それが海人の魔可を知るきっかけとなった、と書くと重要人物な気がしたのですが……
「色欲」の魔可を持ち、同性にやたらモテ、可愛がられてしまう性質を持つ
能力として美少女ゲームでとても美味しい能力もちを持っているが活かされる事はなく
一度は失敗したもののニコルにお願いをされてカルマルカを調査することになり
周囲も協力してくれる、その中でニコルは、本来の目的を隠し心を痛めていた……
そんな就職希望動機が建前だからみたいな事で心痛められても……と思いつつも
基本的に、腹を割って正直に話したら大抵のシナリオは解決するので由とします
勿論そこを引っ張るのではなく、山場としてもう一展開あるのは良いのですが……
しかし、ユーラシアの端の地図次第では消えてしまうような規模の国のかたがたに
「小さな国の道路だ。狭すぎて嫌になるぜ」って言われるのは嫌になるぜ……
ニコルは顕著ですが、暦と言い、時事的なネタをぶち込まれると色々戸惑います
特にヒロインの元のパーソナリティも、魔可も関係ないこの展開は流石に……
カルマルカに対する執着という点では晴と近い流れですが、全体的に浮いてますね
グランド関連要素は……黒服?他にカルマルカを狙う存在がいるというブラフでしょうか
■高坂夕姫羽
海人たちの先輩にであたる学生会の副会長、会長と違い性格はかなり適当であるが
年長であるのか、いざという時はなんとかしてくれたりする場面もあるような無いような
「強欲」の魔可もち、スイッチが入ると目に付いたものは何でも買う程の物欲を見せる
サブという位置に甘んじてはいますが一応彼女も攻略対象であり、Hシーンもあります
勿論グランド突入には必要な存在だったりと、必ず一度は触れる必要のある存在です
未来と同様にわざわざ、ヒロインからはずす必要があるのかなという存在ですね
分岐直後には好意を持っていることがほのめかされます、ルート確定まで来ると
完全に見え隠れする状態になります、まさかの過去に出会っていた系ヒロインです
恵まれすぎる境遇ゆえ見失ってしまった自分の役割ということで共通からの流れを汲み
魔可とのつながりも何となく見えるシナリオにはなっています、ただサブゆえなのか
そこから急展開であっさりとお話が終わってしまうので、なんとも……
普段は他人を弄る側にあるヒロインが、いざ矢面に立つと弱いのはいいと思います
■グランドシナリオ
奈月シナリオで存在が仄めかされた鏡が登場しカルマルカの接続が成功して起きる
カルマルカの接続、7年前の事件、奈月の母、未来の正体などが明らかになるお話
ある程度今までのシナリオを読んでいれば予想できる範囲の話も多いですけどね
基本は奈月ルートなのですが、恋愛沙汰は無く、伏線回収、設定回収がメインです
儀式によって倒れた蓮、突然現れた関係の無いはずの未来、そしてカルマルカの接続
何かきな臭いものを感じた、同好会のメンバーは、戸惑い始めることになります
ということで、序盤は学園ホラーとかそんな感じ雰囲気のシナリオになっていますね
そのきっかけとなる蓮が倒れたことの原因は、正直あれな理由なんですけどね
カルマルカに対するそれぞれの思いから一度は離散してしまう同好会が再度集り
カルマルカと7年前の事件について迫っていくというお話で、伏線回収されていきます
各ヒロインの魔可のルーツも語られたりと、導入部の伏線は全部ココで回収されます
しかし、ニコルとかは魔可との因果関係については説明できない部分があります
個別シナリオでも仄めかしはしたんですけど、ネタをグランドに集約したがために
普通の少し不思議なラブストーリーみたいな内容に個別シナリオはなったんですかね
グランドにしても設定の無理な部分はまとめ切れていない感もありますが……
また、設定回収に走りすぎて美少女ゲームなのですが奈月との仲は進展するも
特にHな要素もイチャラブな要素もないので、個別とのバランスが悪い気も……
一応セクシー担当として水にぬれる咲と奈月の無駄に変態な縛りがあります
いや、そんな中途半端なことされてもって感じではあります、基本設定回収です
□笹倉未来
OHPのサンプルボイスをみても解るとおりヒロインではないがキーキャラ
ヒロインではない為、海人にデレるなどの美味しいイベントはない
(仲間という意味ならば最後に一応、打ち解ける描写はあります)
ただ、グランドのもう1人のメインで、奈月連投させるなら……とも
「傲慢」の魔可もちで、海人の「憤怒」と並んであっても困らない類の魔可
カルマルカ・サークルについて詳しく知るが故に、阻止しようとする
しかし学園長に協力しているようにも見られ一貫性のない彼女の狙いとは……
秘密を知ってかき回しながらも一人突っ走って自体をややこしくする娘です
かなりの覚悟を持って行動しているのは解りますが7年前を知らないプレイヤーとして
そこまで思いつめてしまうほどのことなのかなーと思ってしまったりもします
慕っている奈々見の影響なのか私服も制服も凄い格好ですね……
【Hシーン】
天ヶ瀬奈月:3
朝比奈晴:3
夏目暦:3
乙音ニコル:3
高坂夕姫羽:2
メイン3枠、サブ2枠、最近のHシーン増加の傾向を見ると平均より少し下ぐらいです
一応1シーンには2~3枚程度CGが使われていたり、構図やシチュなどに工夫は見られます
フェチっぽいシチュもありますし、回数は少なめですけど頑張っている印象
【まとめ】
SAGA PLANETSにとって転機となるのは間違いないだろうなと思われる作品
良くも悪くも強烈なブランドの個性として存在したライターが抜けた影響は無視できず
今までのようなシナリオにおける灰汁の強さは消えた反面、印象も弱まった気がします
しかしブランドイメージもあるでしょうが、今までの雰囲気を踏襲しようとしている面もあり
それが、より「今まで」との違いが鮮明に映ってしまっているように感じられるのも事実で
ともすれば、無難なところに収まった感もある今作は人によって印象が悪いかもしれません
前作はライターが1人ということもあり、シナリオの良し悪しは置いておくとしても
テーマに統一性があり各シナリオの役割がはっきりとしていた部分があるのですけど
本作は、グランドに全て任せてしまった上で個別は好き勝手……とは言わないまでも
目指すところが見えない散らかった構成になっているなとい印象がありました
一応グランドへの伏線として、各シナリオでネタが部分的に出ているのですが
(その中でもニコルシナリオの位置はアレですけど……)、加減が出来ておらず
グランドシナリオのネタの大半が割れていて、驚きの足りない内容になっていました
懸賞クイズにあるじゃないですか、
9月27日SAGA PLANETSより発売される美少女ゲームはなんでしょう?
ヒント「カル○ルカ*サークル」……みたいな、流石に極端な例ですけど
この辺りも、ライターが複数居る故の連携の甘さという感じでしょうかね
勿論そんな作品いくらでもあるんですけど、前作が前作だけにというところです
この辺り序盤の導入部分が少々大仰過ぎたのもあるかなと思います
ただのハッタリと一笑に付すれば何てことないんですけど、そこで期待すると
個別シナリオのワンクッションで大ブレーキが掛かってしまいますし
最後まで読んでも、小さくまとまったな的な印象になりかねないと思います
体験版の見せ方的には良い導入部分だと思うんですけどね
本編としては共通での扱いは軽く流して、グランドでとやったほうが
メリハリも出来たのではないかなと思ったりもします、戯言です
あとヒロインについても、何故主人公を除いて6人の魔可もちを並べて
1人はキーキャラだけど攻略不能、1人はポジション的にサブとしたのでしょうね
全員攻略できるとあからさまなアレすぎる気もしますが、ココまでお膳立てして
という感じもします、蓮については、何だったんだろうね……
構成とかの話はともかくとして、四季シリーズはあまり意識せずに
伝承に振り回される少し不思議な男女のラブストーリぐらいに受け止めて
それで楽しめそうなら、上手くまとまっている作品ではないかと思います


