エウシュリーの「創刻のアテリアル」の感想です
やり込み要素の多いRPGやSLGで定評のあるエウシュリーの新作は
新規路線となる、カードバトルを中心に据えたRPGとなっております
シナリオは天使、悪魔あるいは中立という3つの立場で大きく分岐しており
メインシナリオの傍らでヒロインのシナリオもあるという形になっています
ヒロインは8人+α、Hシーンのあるキャラを含めるともう少し多いです
攻略制限などもあり、全員を攻略しようとするとちょっとした手間になります
メーカーの最近の作品と比較すると、極端にやり込む場合を除けば1周が短く
忙しい方にも1勢力だけならクリアならそれ程時間が掛からないと思われます
(それでもゲームとして十分なボリュームになっているのは間違いないですけど)
今までと比較すると全ヒロインと言わないまでも全シナリオをプレイする事を
前提とした周回プレイを意識した作りになっているように感じられました
また、シナリオ毎に主となるヒロインが定められているようにも見られます
別のヒロインを攻略していても、攻略中ヒロインのイベントが存在しながら
シナリオ終盤になる程、メインヒロインを扱ったイベントの比重が増えていき
しかし、エピローグで攻略したヒロインとの関係が語られるという微妙な流れに
どうも、メインシナリオの仕様とヒロイン攻略の連携が取れてないように感じられ
攻略の傍らにやり込みの1つとしてヒロインをどうぞと言われているような
メインシナリオの進行と、ヒロイン攻略要素が上手く噛み合っていないと思う反面
逆にゲーム要素と割り切っているのではと考えるとゲームとして上手く融合していると
言えるのかも知れません、この辺り何を求めるかで印象は変わりそうです
メインシナリオの傾向は、某○○転生を彷彿とさせると言ってしまえば
私の見識が非常に狭いのかも知れませんが、狙っているのかなと思う部分も
ただ、舞台としては好みなので、上手く調理していれば楽しいとは思うのですが
やたらパロディネタも多くて、根幹以外は割と好き放題やっている印象です
APPENDシナリオではパロディやネタ要素が強い傾向だったのですけども
本作は日常パートとして書かれる学園編が長いせいか、登場人物の傾向か
APPENDに入る前からそういったおふざけ的部分が前に出ている気がします
壮大な設定はいつもの事ですが、今回はファンタジーではなく現代モノなので
所謂厨二的な成分が非常に強く感じられる内容になっているかと思います
しかし、始まった時はただの学生であり、覚醒して間もないはずなのですけど
それで最後まで通用してしまっているので、広いのか狭いのか良く分からない
スケールの作品になっているように感じられました、良く分からないバランスです
肝心のゲームパートですが、プレイヤーのカードゲーム熟練度に大きく左右されそうです
おそらく初心者も抵抗なくプレイできるようにシンプルに作られているのですけど
あるいは、複雑にし過ぎてもCPUが難しそうなので避けているのかも知れませんけど
(複雑なカードゲームをフレキシブルにこなすようなCPUなんて考えつきませんけど)
それが、仇というと言い過ぎですが、大きく好みを分けてしまう結果になっているかと
基本的にはパワーゲームで何とかなってしまうバランスになっておりそれ以上求めても
CPUを如何に効率よく圧倒的にフルボッコするか位しかデッキを組む必要性が感じられません
対戦という概念がないので、結局カードの性能と初期は一で有利なCPUを倒すという事以上の
プレイが求められておらず、カードが揃わないうちに強敵と戦うと考える余地はありますが
それは、ハンデ戦という特殊な状況下の戦いであり、ゲームの楽しさかというと疑問です
肝心のCPU戦も先に語ったとおり、敵の方が圧倒的有利な状況で始まる対戦を
相手の馬鹿さ、あるいはこちらの柔軟さで対応して戦況を整えるゲームになっています
カードゲームというよりも自由度の高いパズルゲームという印象が強いですね
TCGという強力なレアカードなど早々手に入らず限られたカードの中からデッキを考え出し
互いに思い通りに回らないカードとにらめっこしながら、的確に状況を判断して
自分の思った戦略、コンボなどが決まり勝利する事に快感を得るモノが多いと思います
しかし、このゲームはレアカードはシナリオの進行で決まった数だけ入手していく事になり
戦う相手もデッキが固定されて、カードの周りがほぼ約束されたような頭の悪いCPUで
こちらも、その場をしのいで相手を追い詰めていくという限られたシチュエーションばかり
と、周辺の流行のTCGと比較すると供給されているモノが大きく違うモノになっています
ただ、玄人が要求されるゲームを作ると素人やCPUが対処できるとは思えませんし
有名どころのTCGだって、最初は壊れたバランスでクソゲー扱いされるのが世の常です
そもそもこのゲームはトレーディング要素が皆無なので(合成が一応ありますが)
こういう性質、バランスの流行のTCG風カードゲームだと考えるのがよいかも知れません
エウシュリーも他で実績があるとはいえ、こういったカードゲーム初挑戦でしょうし
その方向で考えると、よくここまでプレイできるバランスに収める事が出来たと
しかし、身も蓋もない事を言えば、カオスでディープなカードゲームの世界に
足を踏み入れてしまったのが今回の悲劇ではないかと思われるのですが、果たして
勿論、このバランスが心地よい人もいるでしょうし、これはこれと楽しむ方もいるでしょう
とりあえず色々酷い事は言っていますが、それだけ賛否が生まれてもおかしくないという
業の深いゲームだという事だけは確かだと思います、一概にバランスと言っても難しいよね
そんなわけで本格志向のカードゲームをプレイしたい人には厳しいかも知れない作品
これはこういうゲームとしてあくまで雰囲気を楽しむ事モノとして過度の期待はしないこと
カードゲームが未経験、そこまで深くのめり込まない人は体験版をプレイするなどして
最低限ゲームの雰囲気などを知っておくと良いでしょう、ずっと付き合う事になるので
簡単と言ってもRPGの用に、ザコ戦は適当に戦っていればいいやと言う程甘くはないので
かなりの時間をこのゲームと付き合っても楽しめると思えるなら大丈夫かと思います
体験版の時点で面倒だと感じるなら少し様子を見ておいた方が良いかもしれません
シナリオとしては学園モノ+ファンタジーとしては王道かと思います
設定は学園モノでありながらも相変わらず過剰に壮大な傾向にありますが
日常は非常にホノボノとしており要所要所の展開は性急というバランス
ヒロインは個性的ですけど、各シナリオに過剰に期待すると肩すかしかなと
あくまでゲームありきで雰囲気を盛り上げる材料という印象になっています
ゲームは厳しそうだけどシナリオが楽しければという期待は厳しいかなと思います
他のメーカーでは中々真似できないであろう程作り込まれていることはわかりますが
初挑戦するには、シナリオ、ゲームどちらもハードルが高すぎたように感じられます
結果的に努力の跡は垣間見られる良く作られたゲームながら微妙に滑っている作品
と言う感じで、いい知れない、もどかしさを感じる部分が多い作品になっていました
以下、ネタバレを含む感想