
【概要】
かつて鉄道事故で家族をなくした「右田双鉄」は第二の故郷ともいうべき隈本県は御一夜市に
工場誘致による水質汚染から守るべく、帝大を休学し実に6年4ヶ月ぶりに帰省することになる
双鉄は泊まる場として案内された祖父の部屋で一体のレイルロオド「ハチロク」を見つける
国産第一号の蒸気機関車8620形のトップナンバー機8620専用のレイルロオドであるハチロク
彼女の出会いと、倉庫に眠っていた車体の存在を受け、双鉄は8620を観光資源の旗印として
エアクラ工場誘致とは別のアプローチでの御一夜市の経済の再生を図っていくことになる
【システム】
・画面は16:9
・キャラ別音声設定あり
・シーン単位でのジャンプあり
・TIPSによる用語の補足あり
・E-moteによる立ち絵とCGの演出あり
システムはブックマークに少し癖があるものの必要な物はたいてい揃った便利なものです
しかし、一番語るべくはやはりE-moteによる演出でしょう、これが非常にレベルが高いです
サブキャラに至るまで動く事は勿論、自然さもあり、違和感なく動きが見られます
また、Hシーンを含むCGでも、E-moteによる演出がなされており、しっかりと動きます
さすがにCGのオブジェクト全てというわけでもないですが、演出としては十分過ぎるレベル
「ウィッチーズガーデン」で存在を示してから漸くそれを超えるレベルのが来た感じです
【仕様】
ヒロインは9人、凪とふみかは一セットなので8ルートあり、そこにグランドを含め9ED
さすがにメイン格より、サブのルートは短いですが、それでも全員のフォローは流石です
グランドへ向かうまでに8つルートを攻略する必要があるので長く感じるかも知れません
本編でシナリオの途中でHシーンは差し込まれず、シナリオの途中でHシーンが追加されます
鑑賞モードに飛ばなければHシーンを一度も見ること無くグランドエンディングまでいけます
プレイスタイルで、Hシーンはスキップして後で見るというのはよく聞く話ではあるものの
思い切った仕様であるため、本編中の流れを含めて楽しみたい人は引っかかる部分でしょうか
【雑感】
演出を除けば、ヒロインが多めの少し幼女のヒロインが多い、普通のADVというところ
ただ、立ち絵とCGのE-moteによる非常に作りこまれた演出が一線を画しています
演出の他にも環境も非常に気を使っている印象で作品全体で不快となる演出は避けられ
本作のヒロインの可愛さを堪能するためにも舞台がしっかり整えられている印象です
シナリオは鉄道を中心とした地元振興と再生をテーマにしており少し固い気もします
ファンタジーな設定はレイルロオドやエアクラ機関を中心に数多く存在するのですが
それはその世界の常識みたいなもので、特に、シナリオ自体は派手な展開無いです
むしろ理詰め(細かい部分の破綻はあれども)で話し合って進めていくという感じで
全体的には展開は地味であり、雰囲気こそこわさないものの、平坦に感じる部分もあります
結構な分量のシナリオであり、その辺りがプレイするときにどう感じるかという所
派手さに欠けるのはヒロインとの関係でも一緒で、Hシーンが略されるのは先に描きましたが
ここぞとばかりにイチャラブでヒロインとの関係を描くようなシーンもあまりありません
あからさまなイチャラブ描写などなくても、ヒロインの魅力を描くことは可能と想いますが
昨今のイチャラブ重視の萌えゲーの水準を求めるなら糖分は控えめかなというところです
尤も、それを置いても取り敢えずは味わって欲しいと思える演出レベルということで
キャラが動くさまは、下手なイチャラブ描写よりもの説得力があるものです
キャラのデザインなどが気に入れば、取り敢えず味わってみて間違いない作品かなと
以下、ネタバレを含む感想
【ヒロイン】
■ハチロク
旧帝電の国産第一号の鉄道8620型の栄えあるトップナンバー8620専用のレイルロオド
と書くと解るようなわからないような、鉄道ファンには垂涎の機体のナビというところ
その立場に名前負けしない、優れたレイルロオドであり、言動にも気品を感じさせる
かつての電車事故を受けて車体と共に眠らされていたが、右田家の祖父に引き取られた
事故の後遺症か当時ほどの性能が発揮できず、何度となくトラブルに見舞われることに
それでも基本優秀なレイルロオドだが、どこか隠し事をしている雰囲気がある
まいてつというタイトルからある電車ネタも殆どこのシナリオに詰められており
更に双鉄の過去とも関わるシナリオも含まれるため分量も設定の詰め込み具合もトップ
とはいえ、列車ネタを中心として部分はTIPSを含めて細かく語られるシナリオですので
そこを楽しめたので退屈せずに読むことが出来ました、そこに興味ないとキツイかと
切符の件はべたべたなネタですが、ハチロクの普段のキャラとのギャップが良かったです
その経緯から基本は隙のないキャラだけに、個別で見せる弱さや隙が美味しいキャラです
レイルロオドという存在と付き合うという一番面倒な部分があっさりと超えられますけど
この辺りの不思議設定は軽く流すほうがいい感じなのでしょうね、予想外のところで
ヒロインとの関係に障害を持ってきた感じですが、基本は丁寧に描かれたシナリオでした
■雛衣ポーレット
フランス人とのハーフであり、亡き父の後継いでエアクラ工場誘致反対の旗を掲げる市長
その一方でキハ07Sの御一夜市で列車を走らせる御一夜鉄道の社長も務めとている
非常に努力家であり優秀な人物であるが、二足のわらじによる負担とその性格から
市長としては上手く立ちまわることが出来ず、周囲からは厳しい評価を受けている
市長ですけど、市政という面では日々姫に譲っている感じで、個人の性格由来の部分と
そこからの成長をれいなの改修イベント含めて回収している感じでしょうか
とはいえ列車重視のハチロクと市政重視の日々姫の間ぐらいのシナリオという印象
比較的初期から双鉄を意識ている様子で、周辺のアプローチなども微笑ましいです
フィールドワークなど含めて、デート的なイベントも多く、ヒロイン度は高めな印象です
稀咲の設定の詰め込み具合でかすみますけど、このヒロインも大概詰め過ぎ設定ですね
やっていること自体は稀咲よりもおかしい感じで、このヒロインの無茶さがあるからこそ
シナリオとして回っている感もあります、若い人が頑張りすぎる作品ですね
■右田日々姫
双鉄が引き取られた右田家の次女で、妹のような存在、絵の才能がある
帝都に憧れており、標準語で話そうと背伸びするが、すぐに隈本弁が混ざってしまう
憧れの先輩である宝生稀咲の影響もあって、誘致の賛成派のポジションに居る
憧れが勝ち、多少前のめりな部分もあるが、基本は文武両道の優等生で飲み込みも早い
市長選中心のシナリオ、先輩の稀咲を含めて学生であることに意味が感じられません
大学を休学して駆けつけた双鉄が市政や、場合によっては会社の設立や経営に関わったり
20代後半から50代ぐらいの世代が死滅した特殊設定が背景にあるのかと思うほどに
若い人たちがやたら重い役を任されて何事も無くこなしたり乗り越えたりと頑張ります
幼いヒロインが多い作品なので全体的な年齢層が下がるのは仕方ない気もしますし
実際に若い人でも下手な大人よりも優秀な人物がいることも納得できなくもないです
あくまでも日ノ本という架空の世界という話ですし、それを言えば帝都時代から
レイルロオドという部分だけやたらめったらに技術がぶっ飛んでいたりしますし
選挙の部分だけ殊更に追求してしまう理由もない気がするのですけども
流石にこのシナリオは違和感のほうが勝ってしまうシナリオになっていました
勿論、日々姫の成長物語にしても、もう少し別の役割があった気もしますし
稀咲含めて、学生っていう設定は無理があったんじゃないかなと感じました
目まぐるしさもあって、あまりイチャラブしている感じもありませんでしたね
どちらかと言うと日々姫が憧れる立場なので、イチャラブ成分も弱めに感じました
■れいな
御一夜鉄道で走るキハ07s専用のレイルロオド、一番の犯罪臭所持者
見た目と言動からは想像がつきにくいものの鉱山鉄道として活躍した歴史をもつベテラン
ただし、基本は甘えん坊で、誰に対しても好意的、ポーレットにとっては娘のような存在
芯はしっかりとしており、思わぬところで助けとなってくれる部分もある
ポーレットルートのフィールドワークの延長上でれいなになつかれるお話
れいなの過去が語られ、ポーレットでフォローできない列車ネタを入れた感じも
れいなの思いを知ってあっさりと身を引くポーレットさんをはじめ周囲の理解が良すぎます
レイルロオドという存在はスルーされがちですが、これを合法にするための存在なのでは
■右田真闇
日々姫の姉にして、御一夜を代表する焼酎蔵の右田一酒造の杜氏
水が命であるため、エアクラ工場誘致には一番脅かされるポジションのはずであるが
その影響力の高さから一歩引いた位置で双鉄たちの行動を見守る存在となっている
理想の上司みたいなポジションなのでしょうが、事が事だけにもっと積極的に動いていい気も
そんな感じで、真闇姉が動かない理由とか、隠していた想いとかが語られる話ですね
酒のコンクールで結果を出して、いろいろ解決という非常にシンプルな話
……双鉄って6年4ヶ月ぶりの帰省だった気もするんですけど意識するタイミングって
■宝生稀咲
隈本銀行頭取の娘にして、御一夜の支店長を務めている、現役の学生でもある
日々姫の絵の才能を見出しており、活躍の場を与えており、頼れる先輩の面もある
現状を見て、父と同じくエアクラ工場の誘致が最良な手段と判断して活発に推進中
非常に現実的な性格であるが、
銀行支店長という立場から、銀行業務がネタに語られたりします、社会勉強ゲーム
日々姫以上に学生である必要性が皆無なヒロイン、たまに見せる隙はいいですね
という感じで、そういう可愛さを多少見せてくれるフォロー的なシナリオでもあります
浦上さんについては、特に語ることないです、ベタベタのネタではあると思います
■蓑笠凪/早瀬ふかみ
地元の学生コンビ、日々姫などよりも一回り下という感じでしょうか
凪は剣術大好きな、竹を割ったような性格とストレートな言動が気持ちの良い鍛冶屋の娘
ふかみは凪とは性格が正反対なひっこみ気味な娘、川下りの家業を手伝っており力はある
暴風雨でふかみの家業を手伝うことで、二人により気に入られることになる感じで
懐かれた後は一緒に遊んだりして、その関係を周囲に咎められること無く受け入れられます
難しく考えず、2人との交流を楽しめばいいのでしょうが、なんでしょうこの罪悪感
■グランドシナリオ
各シナリオの美味しい部分を総取りしたら?的な複合ルートという感じです
淑女協定というネタも飛び出したり、おまけルート的な意味合いもあ強い気がします
双鉄の物語としてはハチロクシナリオの方で完結するので、特に語る部分もないのですが
逆にこのハーレムモノ的な展開は戸惑うかもしれません、この際ならハーレムHを……
【Hシーン】
・ハチロク:5
・雛衣ポーレット:4
・右田日々姫:4
・右田真闇:2
・宝生稀咲:2
・凪+ふかみ:2
・凪:1
・ふかみ:1
・ポーレット+れいな:1
・れいな:2
本編にはHシーンが登場せず、シーンが追加されたというメッセージがあるのみです
タイミング的にそこで挿入された雰囲気だけだして、CS移植の如く飛ばされます
本編にシーンを入れられても、どうせスキップというユーザーも一定数いるでしょうが
やはり物語の連続性というのもありますので、少々味気ない気もする仕様に感じます
風呂のシーンさえクリアしてしまえば、それこそそのまま一般向けへシフトできますし
という邪推が働きますけど、メイン格は4,5シーン、サブも2、3シーンと数はあります
E-moteを使用しており、アニメほどではないですが、かなりなめらかに動いてくれます
ただ、やはりアニメ演出がある抜きゲーと比べると少し違和感が勝ってしまう感じです
とくに竿が出てきてヒロインと接触する部分はどうにも浮いている感じがあるのですよね
アニメと違い繰り返しでなくても動くのですが、これはE-mote完全優性ではない印象です
プレイは足によるプレイやおもらしがマニアック方面なプレイという感じでしょうか
全体的に可愛らしいヒロインが多いので、その罪悪感が一番のスパイスな感じもあります
非常に濃いわけではないですが、イケナイ感じはでています、なぜカタカナにした
仲の良いコンビは3Pがあるなど、おさえるところしっかりおさえてはいますね
【まとめ】
非常に丁寧に作りこまれた作品で、作品に対する製作者の愛情を感じました
E-moteを使った演出では、このレベルに達していたのは過去作品では知りません
E-moteはそれまで「ウィッチーズガーデン」みたいな感じでしたが、並ぶどころか
これを軽々凌駕しており、この作品にかけられた手間暇はどれほどのものなのかと
想像すると足向けて眠れない感じです、眠いと寝ますが、頭は下る思いです
とにかく、ここまでの作品を最後まで妥協なく作り上げた様には非常に感動しました
ただ、そんな真面目な(?)ブランド故か、シナリオはなかなかに固いお話でした
会議会議で上手く回らない日々に悩む社会人として癒やしの物語を求めたのに
エリート社員たちのスムーズに進む会議が如く会話を何度も見せられます
私のコンプレックスの話はおいて、なにかにおいて、問題発生、皆で話して解決
というのが多い作品です、それが正道だとは思いますけど、そればかりですし
結局アッサリ解決が見つかってすごく簡単に解決するのはなんだかなぁと
鉄道の復活などのように、成果がどれもアッサリ流され気味で終わってしまい
毎回、問題発生と話し合いや、何気ない発言、行動からの解決の糸口が見つかる
というのを繰り返すのはどうにも単調です、解決後の成果まで見せると長くなる
のもあるでしょうけど、メリハリ的な意味でもそういう発散の場は欲しかったです
事件は現場で起きて、会議室で解決しているんだ!という感じのお話です
鉄道ネタがもられたハチロクシナリオは、双鉄もスポットに当たり読みやすかったです
説明は丁寧ですし、読んでいて、にわかでも知識が増えていく感じで楽しめました
ただ、鉄道ゲーかと思えば実際は、御一夜市の復興に重点が置かれており
そちらは、上の凄くスムーズな会議を見ているだけな感じで正直弱かったです
双鉄がよくも悪くも、落ち着いたタイプであり、渦中の外にいる感じなのも弱いところで
たまに、思い出したようにヒロインを意識しだしたりするのはなんとも弱いです
パンツが見えるとか、すでにさんざん銭湯に入っとろうねってかんじであります
サブヒロインについては、話がもう少し単純化していて読みやすかったです
ヒロインの魅力も解りやすく強調されている感じになっています
真闇姉は流石にシンプルすぎる気もしますけど、ヒロインフォローはありがたく
稀咲あたりは、普通に良い感じのヒロインに収まっており、その点は満足でした
と、ヒロインの可愛さを堪能するにはおおよそ最高の舞台が用意されていますけど
シナリオはキャラゲーを期待すると少し物足りない感じになっていたかなと
それでもヒロインのデザインなどはよく、可愛らしく動くE-moteもあり満足度は高め
解りやすくヒロインの魅力を伝えてくれる「萌えゲー」のような受動的ではなく
ヒロインの仕草を含めて、可愛いを探す能動的な部分が多いのかもしれません
イチャラブシーンが欲しいというスタイルはあまり向いていなかった感じですね
シナリオは何度か言うとおり、いろいろ引っかかる部分のある作品ではありました
別に嫌味な部分はないですけど、意識は高い感じで、そのあたりの引っ掛かりや
エロゲー的な年齢層に抑えたことで色々無茶の出ている部分とかが特にですね
とはいえ、このE-moteによる細かいところまで作りこまれた演出は素晴らしく
それだけでも、楽しめるポテンシャルはありますし、可愛く思える良さがあります
可愛いヒロインが可愛く動く、そこに価値を見いだせるなら間違いなく薦めらます
雰囲気に惹かれ、絵も好みならば十分に満足の行く作品ではないかと思います
ただ、昨今の萌えゲーのようにわかりやすいイチャラブシーンを求めると
意外と物足りない作品かもしれません、主人公に引っかかりを覚えるなら少し注意です


